上原彩子ピアノ・リサイタル@各務原市民会館文化ホール
今日は、岐阜県各務原市にある各務原市民会館文化ホールで開催された、上原彩子ピアノ・リサイタルを聴きに行きました。上原さんは、各務原市に育っていることもあって、まさに里帰りのリサイタルであります。また今年3月に名古屋フィル定期で、常任指揮者だったマーティン・ブラビンズさんとの、ラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲の演奏も、印象深かったです。
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番ハ長調 K.310
シューマン:謝肉祭 op.9
クライスラー/ラフマニノフ:愛の悲しみ、愛の喜び
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」
アンコール/シューマン:トロイメライ~「子供の情景」から
チャイコフスキー:花のワルツ~バレエ音楽「くるみ割り人形」から
メインはシューマンとムソルグスキーといえるが、モーツァルトのソナタの清々しい溌剌とした、時々垣間見える陰りのある雰囲気の演奏も捨て難い。シンプルでわかりやすい、でも難しいところがある。モーツァルトの音楽世界を、余すことなく弾いていた。
シューマン初期の大曲「謝肉祭」も、彼独自のファンタジーを描き出した。最初の前口上の堂々とした輝きから静かな、でも激しさもある曲が展開され、舞曲に行進曲もある楽しい曲である。ドイツ・ロマン派の曲も、上原さんのレパートリーにふさわしい名演奏だった。
しかし上原さんはなんといっても、ロシア音楽ではなかろうか。チャイコフスキー・コンクール・ピアノ部門で優勝し、ラフマニノフからプロコフィエフの作曲家を演奏してきた彼女である。今回はラフマニノフのトランスクリプションズとムソルグスキーの組曲をチョイスした。
クライスラーと同じマネージャーだったラフマニノフが、彼の有名なヴァイオリン曲を、もっと華やかにピアノ編曲した。これも見事。
ムソルグスキーの壮大な組曲も、華やかに陰影を秘めて、しかし鍵盤という絵の具で音楽の絵画を描ききった。ムソルグスキーのオリジナルはピアノ曲で、ラヴェル編曲が人気である分、隠れがちになってしまった。しかし、ホロヴィッツから辻井伸行さん、アリス=紗良・オットなどこぞって演奏されるようになって、もちろん上原さんもCDの録音もある。最後のキエフの大門は、実に圧巻だった。
今回のプログラムは、どれもライヴで一度は聴きたい曲なので、とても満足している。
アンコール曲は、シューマンのトロイメライと、チャイコフスキーの花のワルツと、夢のある曲である。ちなみに、花のワルツは上原さんの編曲であるとのこと。ムソルグスキーの壮大な絵画を描いた彼女が、チャイコフスキーのバレエの世界を自ら描いてみせたのはすごい。
ただ興醒めだったのは、「展覧会の絵」の途中で、携帯の着信音が鳴ったことだ。やはり聴衆のマナーが悪いのは、演奏者にも失礼極まりない。これは守って欲しい。
上原さんのサイン会にも参加しました。とてもチャーミングな方でした。同県から素晴らしい才能を持った方が、国内外で活躍しているのは、本当に喜ばしく思ったリサイタルでした。