どら猫亭日乗

読書や音楽、時評もどき(?)など、なんでもござれのブログです。

演奏会アーカイブ:東京都交響楽団名古屋公演2015年

都響といえば、終身名誉指揮者の小泉和裕さんとの指揮で、サラマンカ・ホールでの演奏会で何度か聴きに行った。僕にとっては馴染み深いものだった。名古屋での演奏会は、今回が初。ちなみに楽団員の矢部達哉さん、古川展生さんの演奏も聴いたことがある。
ワーグナー楽劇『トリスタンとイゾルデ前奏曲と愛の死。甘美と悲劇が一体化した前奏曲と、溢れ出る歓喜と官能がロマンティックに描き出す愛の死。重厚でキレのあるインバルの指揮が見事。
そして、ブルックナー交響曲第4番『ロマンティック』。誰でも一度ぐらいは、ライヴで聴きに行ったほうがいい!オケの、交響曲の醍醐味がこの曲にある。楽団全員が全力投球で演奏しきった、最高のブルックナー。インバル&都響ブルックナー『ロマンティック』は、このコンサートホールにいる全員が、気持ちいい感じになったと思う。僕も演奏の余韻が頭のなかにも体のなかにも、まだまだ続き、気持ちいい気分になった。
その後、矢部達哉さんのツイートを見ていたら、なぜインバル指揮のブル4が心も体も響き続けていたかがわかってきた。インバルのディテールに対する執念の凄まじさが音楽を高尚にする。客席から矢部さんを見て、それに応じようとする姿が垣間見えて、かっこよかった。
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演奏会アーカイブ:名古屋フィル第433回定期演奏会

今日は、名古屋フィル第433回定期演奏会を聴きに行きました。曲目は、次のとおりです。

ラフマニノフ
交響詩『死の島』
パガニーニの主題による狂詩曲
交響的舞曲

指揮:マーティン・ブラビンズ
ピアノ:上原彩子
管弦楽名古屋フィルハーモニー交響楽団

今シーズンをもって、名古屋フィル常任指揮者を退任することになったマーティン・ブラビンズさんの最後の定期演奏会は、オール・ラフマニノフ・プログラム。ブラビンズさんは、母国イギリスの音楽はもとより、ドイツやロシアなど、レパートリーは幅広い。ラフマニノフもそのひとつ。そういえば、初めてブラビンズさん指揮を聴きに行ったのも、ラフマニノフ交響曲第3番だった。それから、2シーズンも聴きに行く機会に恵まれなかった。ようやく昨年7月の定期で、念願かなって聴きに行った。ムソルグスキーホルストも本当に聴きに行ってよかった。
今回のラフマニノフ・プログラムも、彼の思い入れたっぷりの選曲と指揮ぶりを発揮した。
交響詩『死の島』は、ベックリンの名画にインスパイアして作曲したもの。岩と糸杉の島の薄気味悪い情景、死への畏れが描かれている。折しも東日本大震災の日当日と翌日での演奏あって、その津波などの災害が思い出して、ぞっとするような感じがした。時々、軍艦島を連想しぞっとした。
チャイコフスキー・コンクールで日本人初のピアノ部門第1位で話題になった、上原彩子さんをソリストに迎えた『パガニーニの主題による狂詩曲』。これも有名で、ピアノとオーケストラのための変奏曲という形式で、特に第18変奏は有名だ。
この演奏は、今まで聴いたことのない出来映えだった。上原さんの繊細ながらダイナミックな弾きぶり、もう圧倒、そして魅了されたの一言に尽きる。ライヴで聴くのは初めてだが、こんなにすごい演奏を聴けるとは、思ってもみなかった。もちろん各変奏もチャーミングで面白いが、最後にかけての凄まじい集中力には、さすがである。

交響的舞曲は、ピアノ二台でも演奏されることもあるラフマニノフの名曲。彼はこの曲に思い入れがあって、自作では高く評価しているという。
全曲そうだったが、ブラビンズさん入魂の指揮ぶりだった。ラフマニノフのロシアのロマンティックもダイナミックも、すべて出し切ってオーケストラと一体となって音楽を作り上げていくのが、客席から伺えた。ブラビンズさん、すべてを出し切った表情で、団員や客席に笑顔を振りまく姿が印象的だった。

その後は、ポストリュードというミニ・コンサートが開催。上原さんのピアノで、ラフマニノフ初期の作品『楽興の時』の前半を演奏した。若き頃の感傷と情熱が美しく、切ないメロディーを、余すことなく表現した。パガ狂とこの演奏にノックアウトされ、帰りにタワレコラフマニノフのアルバムを買った。

ポストリュードには、ブラビンズさんも客席で聴いていらしたので、このままお別れするのも寂しいので、会ってお礼を言い、サインもしていただきました。本当ににこやかで、温かい方でした。今回で最後は寂しい限り、でもいつか客演で来てくださることを祈ってます。ブラビンズさん、本当にお疲れさまでした。そして、素晴らしい演奏をありがとうございました!


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演奏会アーカイブ:名古屋フィル市民会館名曲シリーズ

今日は名古屋フィル市民会館名曲シリーズ(日本特殊陶業市民会館フォレストホールにて開催)「マーティン・ブラビッシモ!Ⅳ マーラー」を聴きに行きました。曲目は次のとおり。

マーラー
リュッケルトによる5つの詩
Ⅰ私は穏やかな香りを
Ⅱ美しさゆえに愛すなら
Ⅲ私の歌を覗かないで
Ⅳ真夜中に
Ⅴ私のこの世から姿を消してしまった

交響曲第5番嬰ハ短調

バリトン:与那城敬
指揮:マーティン・ブラビンズ
管弦楽名古屋フィルハーモニー交響楽団

常任指揮者マーティン・ブラビンズさんが、数々の名作曲家の作品を取り上げるこのシリーズ。今回はマーラーである。マーラー名フィルではたびたび取り上げる作曲家で、今回は僕の好きな第5番ということあって、楽しみにしていた。

まず『リュッケルトによる5つの詩』。バリトンの与那城敬さんは、オペラやコンサートで活躍中、NHKニューイヤーオペラコンサートにも出演している。マーラーは『大地の歌』にも出演している。
『リュッケルト~』は、名前のとおり彼の詩をもとに、マーラーが作曲したもので、バリトンだけでなく、メゾ・ソプラノ、近年ではソプラノも歌うこともある。
最初の一曲『私は穏やかな香りを』から、与那城さんの美声に引き込まれた。歌唱力も抜群で、スタイルもいい。まさにバリトン界のトップスターだけある。
『真夜中に』『私はこの世から姿を消してしまった』は、特に素晴らしかった。希望と諦観の狭間で、ひとつの光を見いだす光景を、見事表現している。もう、うっとりしてしまった。

マーラー交響曲第5番は、おそらくマーラーで『巨人』と並んで有名な曲で、ヴィスコンティ監督作品『ベニスに死す』に第4楽章・アダージェットが用いられて有名になった曲だ。
冒頭のトランペットが印象的で、肝心なところだが、緊張したのか、ちょっと音が外れた感があったが、その後はキメていた。
大編成のオーケストラとあって、迫力のある音楽世界を築いていく過程を楽しんで聴いていた。ブラビンズさんは、キレのある指揮で、バランスよくオケのパートの演奏を際立っている。
やっぱり白眉はアダージェットとフィナーレだろう。弦楽器とハープだけで、美しい黄昏が目に浮かぶような雰囲気を描けるのだ。思わず涙ぐんでしまった。
フィナーレは、明るい光溢れるロンド。希望に満ちた力強い音楽。『復活』のような神々しさも感じる。
名フィルでは、ティエリー・フィッシャーさんが常任指揮者だった頃の定期で聴いたことがあるが、今回はそれを上回る演奏だった。もうお腹も胸もいっぱいの名演奏だった。

今月で常任指揮者を終えるブラビンズさん。最後の定期も聴き行く予定なので、楽しみにしています。

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演奏会アーカイブ:パーヴォ・ヤルヴィ指揮、N響名古屋定期演奏会

 

R.シュトラウス:英雄の生涯&ドン・ファン

R.シュトラウス:英雄の生涯&ドン・ファン

 

 

2015年2月22日、NHK交響楽団名古屋定期演奏会を聴きに行きました。曲目は次のとおり。

R・シュトラウス交響詩ドン・ファン』op.20
モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番ハ長調 K.510
R・シュトラウス交響詩英雄の生涯』op.40

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ピアノ:ピョートル・アンデルジェフスキ
管弦楽NHK交響楽団

はじめてのN響ライヴなので、とてもワクワクしていた。
交響詩ドン・ファン』。イントロからおお~っとなって、鳥肌が立った。かつて「N響アワー』のオープニング曲を、同じオケで聴けるのは、すごい幸せな偶然!パーヴォ・ヤルヴィのキレのいいシャープな指揮に、心地よさを感じる気がした。
モーツァルト・ピアノ協奏曲第25番。アンデルジェフスキは、なめらかで美しい、肩の力を抜いた感じの演奏をしている。派手さはないが、クリアなタッチがモーツァルトにマッチしているといえる。
英雄の生涯』、やっぱりイントロからすごかった。これほど大編成のオケで演奏するのだから、一大スペクタクルである。堂々とした巨大交響詩を指揮したヤルヴィ様、お見事です。
ヤルヴィ×N響の演奏の評判は、TwitterFacebookでかなり絶賛されたり、やや好みじゃないという意見もあるが、個人的には期待してもいいと思う。今後どんな演奏を聴かせてくれるか楽しみというのが、今回の演奏会で確信した。マタチッチ、ブロムシュテットサヴァリッシュデュトワアシュケナージ、プレヴィンなど、名だたる名指揮者に恵まれてきたN響に、新たな名指揮者を迎え、新しい名演奏を披露し続けるだろう。
N響コンマスの篠崎さん、オーボエの茂木さんと池田さん、フルートの神田さんなどと見覚えある団員がいて、本当に嬉しかった。長年N響アワーに親しんだ僕は、このオケの演奏をライヴで聴くのを、密かに願っていた。しかもパーヴォ・ヤルヴィの指揮でというのが、思いがけない僥倖だ。

N響楽団の皆様、ヤルヴィ様、アンデルジェフスキ様、素晴らしい演奏をありがとうございました!また機会があったら、是非。


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演奏会アーカイブ:名古屋フィル第421回定期演奏会

2015年2月21日。第421回名古屋フィル定期演奏会を聴きに行きました。曲目は次のとおり。

ムソルグスキー:『聖ヨハネのはげ山の夜』(交響詩『はげ山の一夜』の原典)
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番ハ短調op.35(ピアノとトランペット、弦楽合奏のための)
カリンニコフ:交響曲第1番ト短調

指揮:アンドリス・ポーガ
ピアノ:ソヌ・イェゴン
トランペット:井上圭(名古屋フィル首席トランペット奏者)
管弦楽名古屋フィルハーモニー交響楽団

まずは、ムソルグスキー『聖ヨハネのはげ山の夜』。交響詩『はげ山の一夜』の原典。意外と聴きやすかった。おどろおどろしいのはあるが、チャーミングだったり優雅っぽかったりして、不思議な感じだった。
ショスタコーヴィチ・ピアノ協奏曲第1番 。かなり興奮した。特に第4楽章。ソ・ヌイェゴンがショスタコーヴィチのシニカルでシャープかつユーモアあふれる協奏曲を、ヤマハCFXの素晴らしい音色で聴かせてくれた。トランペットの井上圭さんのかけ合いも絶妙!
そして、カリンニコフの交響曲第1番。第1楽章から、ロシアンロマン炸裂!第2楽章の最初と最後の美しさと言ったら…!心奪われた。ひんやりとした感じと熱気が合わさった。久々の名フィル、聴きに行ってよかった。
アンドリス・ポーガは名フィルデビューした指揮者だが、今後の名フィル演奏会に指揮して欲しい。ラフマニノフプロコフィエフ交響曲を聴いてみたいし、ショスタコーヴィチももっと聴いてみたい。
ポストリュードのソヌ・イェゴンのラフマニノフピアノ・ソナタ第2番の後半部分。第2楽章には涙した。第3楽章のダイナミックで躍動感あふれる演奏には、心奪われた。演奏前後の礼儀正しさも印象的。
そして、ずっと気になっていたことがありました。。ショスタコピアコン1番から鳴っていた奇妙な電子音はあの音は、ハウリングだったんですね。気をつけてくださいませ。
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曽根麻矢子チェンバロ・リサイタル@宗次ホール

土曜日に名古屋・宗次ホールにて、曽根麻矢子さんのチェンバロ・リサイタルを聴きに行きました。
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前半はフランスのクープラン一族とラモーの曲を2曲。トークを交えながらの進行で和やかな雰囲気。
フランソワの「恋のうぐいす」やラモーの「優しい訴え」が聴けたのはラッキーだった。クープラン一族の曲の特色を生かして、弾きこなしたのは見事。繊細だが大胆な演奏。
NHKFM古楽の楽しみ」で聴いたバッハフランス組曲第1番は、チェンバロで聴くのもとてもいい。ヘンデルの「調子のいい鍛冶屋」を含む組曲も素晴らしかった。
チャーミングなスカルラッティソナタの後、ソレールのファンタンゴの情熱的な演奏にしびれた。高音ばかり続いたので、アンコールはデュフリの作品。写真撮るのを忘れました。
今回、曽根さんが演奏するチェンバロは、黒と金を基調にした、和風テイストのもの。シックで艶やかでした。
サイン会にも参加しました。女優の波瑠さんのような感じの方でした。
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マーク・パドモア&ティル・フェルナー『冬の旅』

昨日ですが、岡崎シビックセンターコロネットでのマーク・パドモア&ティル・フェルナーのシューベルト『冬の旅』を聴きに行きました。

シューベルト
楽興の時 D.780
歌曲集『冬の旅』D.911

まず、前半はティル・フェルナーのピアノソロ。当初はブラームスのバラード4曲だったが、同じシューベルトの「楽興の時」に変更に。しかし、それでよかった。NHKFM「音楽の泉」のテーマ曲の第3曲も聴けたし、第5曲の激しさや、第6曲の美しさは格別だった。クリアなサウンドを楽しめた。CDを買い求めようとしたら、お目当てのが品切れで、平均律が高いので、Amazonでポチることに。

その次はメインの『冬の旅』。この歌曲集には旅人の苦悩や怒り、嘆き悲しみが込められている。全曲通して聴くのは初めてだが、ひとつのドラマのようにも、孤独なオペラにも思える。
マーク・パドモアは哲学者のような風貌だが、歌い出すと甘美でまろやかな感じがあるが、その反面怒りも叫びもうまく表現している。「冬の旅」を聴いている間、本当にトランス状態になり、心身共に染み入ってきた。旅人の孤独な心情を歌う彼の姿は、舞台俳優のようだった。
アンコールはなし。サイン会でのパドモアさんもフェルナーさんも、気さくで紳士的な方でした。とても貴重な音楽体験でした。

 


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