どら猫亭日乗

読書や音楽、時評もどき(?)など、なんでもござれのブログです。

あいちトリエンナーレ2016プロデュースオペラ『魔笛』

今日はあいちトリエンナーレ2016プロデュースオペラ、モーツァルト作曲『魔笛』を聴きに行きました。実は、これが本格的なオペラデビューでした。これもめったにない機会なので、思いきってチケットを当日で買いました。
初めてのオペラなので、開幕前から興奮気味でした。やっぱり劇場はすごいなと思いました。オーケストラピットや、赤い幕まで、いろんなところに目が行ってました。

主なキャストと指揮、管弦楽、演出は、次のとおりです。

賢者ザラストロ:妻屋秀和
夜の女王:高橋 維
王子タミーノ:鈴木 准
王女パミーナ:森谷真理
鳥刺しパパゲーノ:宮本益光
恋人パパゲーナ:醍醐園佳
夜の女王の侍女:北原瑠美、磯地美樹、丸山奈津美
弁者&神官Ⅰ:小森輝彦
従者モノスタテュス:青柳素晴
神官Ⅱ:高田正人
武士:渡邉公依、小田桐貴樹
童子:井口侑奏、森季子、安藤千尋

ダンサー:佐東利穂子(ナレーションも担当)、東京バレエ団
合唱:愛知県芸術劇場合唱団

演出&美術&照明&衣装:勅使河原三郎
指揮:ガエタノ・デスピノーサ
管弦楽名古屋フィルハーモニー交響楽団

 

とある国の王子タミーノは、大蛇に襲われそうになったのを、夜の女王の侍女たちに助けられる。彼女らはタミーノに、女王の娘でザラストロの神殿で捕らわれた王女パミーナを救い出すように懇願する。途中で風変わりな鳥刺しパパゲーノが現れ、タミーノは共にする。その際侍女たちは、タミーノに笛を、パパゲーノに鈴を渡す。
侍女たちに絵姿も渡されたタミーノは、パミーナの美しさに惹かれ恋をする。パミーナを救うべく、ザラストロの神殿に向かう。ザラストロはタミーノの真の姿を証明するために、タミーノに試練を与える。パミーナと離ればなれになり、それでも結ばれることを望むタミーノ。一方パパゲーノも、恋人を得るために試練を与えていた。二人は童子の力を借りて、ようやく願いを叶える。
ザラストロに復讐を誓った夜の女王だが、彼の力には及ばなかった。タミーノとパミーナ、パパゲーノとパパゲーナはともに結ばれ、祝福される。
愛を得るために試練をクリアするタミーノとパパゲーノの成長過程。恋をしてすれ違い、結ばれるタミーノとパミーナの苦しみと喜び、ザラストロの神聖で荘厳な光の世界と夜の女王の邪悪な闇の世界との対立。そして夜の女王と娘のパミーナの支配と自立の物語。どれでも楽しめる要素たっぷりのオペラである。

勅使河原三郎さんが演出から衣装までを担当。モーツァルトが晩年抱いた幻想と思想が生かされた舞台と演出だった。あらすじは知っていたが、改めて全部通して観ると、このオペラの奥深さがわかる。モーツァルトが晩年に思い描いた幻想と思想を、斬新といえる舞台で実現してみせた。

出演者もすごい。タミーノの鈴木さんはまさに王子キャラにぴったりのキャストだった。圧倒的な歌唱力で惹き付けたのは、夜の女王の高橋さんとパミーナの森谷さん。高橋さんは夜の女王のアリアも難易度高い歌を熱唱。森谷さんのパミーナは悲しみも喜びも生き生きとして歌っていた。
ザラストロの妻屋さんは、先月のコバケン・スペシャルでのヴェルディのレクイエムの熱唱も素晴らしかったが、ザラストロも立派だった。パパゲーノの宮本さんもコミカルな演技と歌唱力が印象的で、バレエを習ったのだろうか、動きも面白くユーモラスに演じた。パパゲーナの醍醐さんもかわいらしい。
東京バレエ団のきびきびとして、しなやかなダンスや、愛知県芸術劇場合唱団の息が合った合唱も最高の見所だった。
そして、マエストロ・デスピノーサ&名古屋フィルの皆さんも素晴らしかった。先日の定期演奏会ドヴォルザークの熱演も記憶に新しいが、今回のモーツァルトもまた格別だ。またの共演を望みたい。

ちなみに、パミーナ役の森谷さんは、今年の名フィル第9演奏会にも出演が決定されている。モーシェ・アツモンの引退公演になる第9に、どんな歌声を披露するのか楽しみだ。

今回のオペラデビューは、華々しく成功、ライヴのオペラもまた格別ですよね。


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名古屋フィル第438回定期演奏会

今日は、名古屋フィル第438回定期演奏会を聴きに行きました。曲目は、次の通りです。

 

ニーノ・ロータ:交響組曲『山猫』

カステルヌオーヴォ=テデスコ:ギター協奏曲第1番ニ長調 作品99

ドヴォルザーク交響曲第7番ニ短調 作品70 B.141

 

指揮:ガエタノ・デスピノーサ

ギター:朴葵姫❨パク・キュヒ❩

管弦楽名古屋フィルハーモニー交響楽団

 

イタリアの新進気鋭の指揮者ガエタノ・デスピノーサを迎えての今回の定期演奏会。ニーノ·ロータの『山猫』は、『ベニスに死す』などのヴィスコンティの映画の傑作で、イタリアの貴族の恋と情熱を描いた作品の音楽を組曲にしたもの。僕は見たことはないが、映画音楽にふさわしい豪華でせつない組曲にしてある。ロータは『ニューシネマパラダイス』など、名曲揃いだった。演奏後のコンマスの後藤龍伸さんの笑顔がとてもよかった。

 

ギタリストのパク・キュヒさんは、これまでに数々の国際ギターコンクールに優勝または入賞した、これも新進気鋭であるが、かわいらしい女性で、赤いドレスも似合っていた。

テデスコのギター協奏曲は、小規模の編成で、バロック時代の協奏曲を思い浮かんだ。演奏も素晴らしく、ソロでも存在感があった。テクニックだけでなく、作品のニュアンスまで的確に演奏した。アンコールは、彼女がそれでよく演奏する『タンゴ・アン・スカイ』。このとき、デスピノーサさんが、木管セクションの席について、聴いていたのが微笑ましかった。

 

ドヴォルザーク交響曲第7番は、もろブラームスの影響を受けた重厚な作りの曲である。この曲もシリアスかつ美しい名曲だが、あまり演奏することはない。しかし近年評価が高まって、8番や9番『新世界より』と後期三大交響曲として、重要なレパートリーとなった。

これほど、熱い美しいドヴォ7があっただろうか?アレグロは炎のような勢いとエネルギーがみなぎって、ロマンティックなほんのり甘味がかかった美しさも、決して甘ったるくも重々しくはない。さらっとしすぎてもいない、バランス感覚のある演奏だった。この感じだと、ブラームスもいけるのではないか。

今回は、弦楽器セクションが見事だった。冴えた演奏は、名フィルが持つ魅力をデスピノーサが引き出したものか。その後、モーツァルト魔笛』を指揮を担当するが、そこでも話題になるだろう。

 

終演後、パク・キュヒさんのサイン会に行きました。とてもかわいらしい方で、見た感じ男性が多かったです。今度はアランフェス協奏曲を聴いてみたいです。


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名古屋フィル第438回定期演奏会

今日は、名古屋フィル第438回定期演奏会を聴きに行きました。曲目は、次の通りです。

 

ニーノ・ロータ:交響組曲『山猫』

カステルヌオーヴォ=テデスコ:ギター協奏曲第1番ニ長調 作品99

ドヴォルザーク交響曲第7番ニ短調 作品70 B.141

 

指揮:ガエタノ・デスピノーサ

ギター:朴葵姫❨パク・キュヒ❩

管弦楽名古屋フィルハーモニー交響楽団

 

イタリアの新進気鋭の指揮者ガエタノ・デスピノーサを迎えての今回の定期演奏会。ニーノ·ロータの『山猫』は、『ベニスに死す』などのヴィスコンティの映画の傑作で、イタリアの貴族の恋と情熱を描いた作品の音楽を組曲にしたもの。僕は見たことはないが、映画音楽にふさわしい豪華でせつない組曲にしてある。ロータは『ニューシネマパラダイス』など、名曲揃いだった。演奏後のコンマスの後藤龍伸さんの笑顔がとてもよかった。

 

ギタリストのパク・キュヒさんは、これまでに数々の国際ギターコンクールに優勝または入賞した、これも新進気鋭であるが、かわいらしい女性で、赤いドレスも似合っていた。

テデスコのギター協奏曲は、小規模の編成で、バロック時代の協奏曲を思い浮かんだ。演奏も素晴らしく、ソロでも存在感があった。テクニックだけでなく、作品のニュアンスまで的確に演奏した。アンコールは、彼女がそれでよく演奏する『タンゴ・アン・スカイ』。このとき、デスピノーサさんが、木管セクションの席について、聴いていたのが微笑ましかった。

 

ドヴォルザーク交響曲第7番は、もろブラームスの影響を受けた重厚な作りの曲である。この曲もシリアスかつ美しい名曲だが、あまり演奏することはない。しかし近年評価が高まって、8番や9番『新世界より』と後期三大交響曲として、重要なレパートリーとなった。

これほど、熱い美しいドヴォ7があっただろうか?アレグロは炎のような勢いとエネルギーがみなぎって、ロマンティックなほんのり甘味がかかった美しさも、決して甘ったるくも重々しくはない。さらっとしすぎてもいない、バランス感覚のある演奏だった。この感じだと、ブラームスもいけるのではないか。

今回は、弦楽器セクションが見事だった。冴えた演奏は、名フィルが持つ魅力をデスピノーサが引き出したものか。その後、モーツァルト魔笛』を指揮を担当するが、そこでも話題になるだろう。

 

終演後、パク・キュヒさんのサイン会に行きました。とてもかわいらしい方で、見た感じ男性が多かったです。今度はアランフェス協奏曲を聴いてみたいです。


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名フィル・スペシャル・リクエスト・コンサート

日本特殊陶業市民会館フォレストホールで、「あなたが決める スペシャル・リクエスト・コンサート」を聴きに行きました。
これは、1月から3月にかけて、名古屋フィルの演奏会で、どの曲を聴きたいかというアンケートを募集し、いちばん得点が高かった曲を演奏するという、画期的なプログラム編成であります。
その高得点の曲が、次のとおり。

ワーグナー:歌劇『タンホイザー』序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 作品73『皇帝』
ドヴォルザーク交響曲第9番ホ短調 作品95『新世界より

指揮:川瀬賢太郎(タンホイザー&皇帝)
円光寺雅彦(新世界より
ピアノ:小山実稚恵(皇帝)

プログラムを見るとおり、これぞクラシックの王道揃いである。オープニングで円光寺さんが「選んだお客様はお目が高い」みたいなことを言っていたが、筋金入りのクラシックファンは食傷気味といえる。しかし全曲ボリューム感があり、クラシックを聴いた気になるのには最適といえる。

ワーグナータンホイザー序曲は、まさか取り上げるとは思わなかった。この曲は、僕自身ではめったに演奏を聴く機会がない。まさにリクエスト・コンサートの僥倖だった。
神聖と俗世の狭間で苦しむタンホイザーのドラマである。ホルンから始まる「巡礼の合唱」の旋律には、いつ聴いてもゾクッとする。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲「皇帝」は、彼の協奏曲のなかでいちばん有名ではないだろうか。華やかできらびやかな曲で、堂々としている。これはベートーヴェンしか作曲できないのではないか。
ソリスト小山実稚恵さんは、何度か聴いているが、これほど美しくきらびやかな皇帝を聴いたことがあったのかと思うくらいだった。名フィルとは、ラフマニノフの2番と3番の協奏曲を演奏が印象的だったが(しかも指揮者が川瀬賢太郎さん)、それと並ぶ名演奏ではないか。アンコールの『エリーゼのために』も可愛らしかった。

円光寺雅彦さんに指揮をバトンタッチした、ドヴォルザーク新世界より』は、可もなく不可もなく、ただバランス感覚がいいといったところか。しかし、全体的にボリューム感がある曲揃いという点では、こういった演奏がいいのではと思う。あまりにも熱演だと、聴いても疲れが出てしまう。有名な「家路」の第2楽章は、ノスタルジック感が、日本人にはマッチしていて、それで第1位になったのではと分析している。ベートーヴェンブラームスみたいな、カチカチな雰囲気より、ドヴォルザークチャイコフスキーのメロディーの親しみやすさが、一般的にはウケているのかもしれない。

カーテンコールには、円光寺さんと川瀬さん、ソリストの小山さんまで登場し、川瀬さんはなんと後半前のアナウンスやお見送りもしていました。スペシャルだけに不意打ちでした。また川瀬さんは、最下位の曲目をやりたいと言ってました。曲目は、次のとおり。

ベルリオーズ:序曲『海賊』
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番
ベートーヴェン交響曲第1番

実現できるんですかね…。



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名フィルコバケン・スペシャル2016

今日は、愛知県芸術文化センターコンサートホールで、名古屋フィルの特別演奏会コバケン・スペシャル2016を聴きに行きました。曲目はヴェルディのレクイエムです。

ソプラノ:安藤赴美子
メゾ・ソプラノ:清水華澄
テノール:西村悟
バス:妻屋秀和
合唱:岡崎混成合唱団&愛知県立岡崎高等学校コーラス部
指揮:小林研一郎
管弦楽名古屋フィルハーモニー交響楽団

ヴェルディのレクイエムは、2時間弱に及ぶ大作である。そのなかで十数年前に映画『バトル・ロワイヤル』の予告編でのBGMで使われて以来、今では有名曲のひとつになった。しかし実際、全曲聴けることはめったにないことだ。しかも、指揮者は“炎のコバケン”こと小林研一郎さん。すごい演奏になるのではと、楽しみにしていた。

ミステリアスに悲しみを歌う「安息を」「憐れみたまえ」、有名な「怒りの日」、ここでもコバケン節が炸裂。激しく劇的なメロディーも、鬼気迫る指揮ぶりで魅了した。熱情と悲しみが同居した、ドラマティックな曲を、完璧といえるくらいに描いていた。激しいといっても破綻がない、悲しみも苦しみも、慈しむようにコバケンさんは指揮をしている。

何より素晴らしかったのは、ソリストの歌手陣と合唱団だろう。ソリストの安藤赴美子さんは、この日体調不良になっていたが、そんなに感じなかった(彼女自身のTwitterによると、ゲネプロ中に声の不調になったとのこと)。特に最後の「リベラ・メ(我を解き放ちたまえ)」というこの曲の山場では、最後まで熱唱、我々聴衆を魅了した。まさに感激だった。
メゾ・ソプラノの清水華澄さんは、艶と張りのある美声で、ドラマティックな歌唱力である。前回のコバケン・スペシャルは生憎行けなかったが(マーラー交響曲第2番『復活』)、今回聴けてよかった。これからの活躍が楽しみ。
テノールの西村悟さん、レクイエムのなかで好きな「我は罪ある者として嘆き」は、美しく歌い上げて、あらためて、この曲がいいと思わせた。独唱としては比較的少ないが、魅力ある歌手として、存在感を出していた。
バスの妻屋秀和さん、まさに冥界の王のような威厳ある歌い方で、恐ろしいくらいだった。そんな妻屋さんは、今年9月には、モーツァルト魔笛』のザラストロ役で出演する。
そして、岡崎混成合唱団と愛知県立岡崎高等学校コーラス部の皆さん、忙しい中練習を重ねて、合唱の力を魅せてくれた。合唱が命といえるレクイエムなので、プレッシャーも半端ないが、力を出し合って歌い上げたことは、ソリスト陣やオーケストラに負けないくらいだった。本当にお疲れさまでした。

カーテンコールは、全部出しきった、やりきったという達成感で、ホール全体が満ちていた。聴衆の拍手もブラボーも、熱く温かいものだった。ソリスト陣、オーケストラ、合唱団、コバケンさん、そして聴衆のみんなが、一体となって喜び合っていた。このような演奏会は、本当に何年ぶりだろうか。この先も印象に残る名演奏になった。

コバケン・スペシャル、また機会があったら、聴きに行きたいです。今度は何の演目になるでしょうか。



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寺神戸亮・無伴奏ヴァイオリンリサイタル@宗次ホール

今日は、名古屋・宗次ホールで開催された寺神戸亮無伴奏ヴァイオリンリサイタルを聴きに行きました。

タルティーニ:無伴奏ヴァイオリンのための25の小ソナタより第20番ホ短調
ルーマン:アッサッジオ第4番ハ短調
ロカテッリ:カプリッチョト長調(ヴァイオリン協奏曲作品3-9より)
ギユマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のカプリースより第10番ロ短調
バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV.1004

寺神戸さんは、日本を代表するバロック・ヴァイオリン奏者のひとりである。今までCDで聴いてきたので、今回ライヴの聴くことができて楽しみにしていた。
やっぱり、ライヴで聴いたほうがいい。バロック・ヴァイオリンの艶やかな音色が、とてもいい。もちろん無伴奏で、寺神戸さんの演奏の素晴らしさ、宗次ホールの響きの良さもあって、バロック時代にこんな演奏をしていたのかと思わせる。
途中で寺神戸さんのトークもあって、興味深い話を聴けた。寺神戸さん曰わく、ヴァイオリンは難しい楽器らしく、それぞれの作曲家がヴィルトゥオーゾ(超絶技巧)を駆使して作品を出しているそうだ。それはヴィヴァルディからパガニーニに至って受け継がれている。
ロカテッリやギユマンのカプリースは、まさに超絶技巧と幻想味がある曲である。協奏曲のカデンツァに使って演奏してもいい、大らかな感じさえ伺える。

なんといっても、いちばんだったのが、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番だろう。シャコンヌを含んだ、言わずと知れた名曲である。今まで聴いた演奏よりは、やや地味っぽい感じもある。今年4月に聴いた、アリーナ・イブラギモヴァの演奏にあった、鬼気迫る演奏ではない。しかしバッハの本質に迫った、着実ながら秘められた感情を引き出した演奏には、胸に迫るものがあった。
アンコールには、パガニーニの24のカプリースから第20番を演奏。パガニーニバロック・ヴァイオリンで弾くのはめったにないことだが、バッハのシャコンヌの余韻を受け継いだような気がして、意外ながら興味深い選曲だった。

今回はバッハ以降の無伴奏ヴァイオリンについてのプログラミングだったが、これはNHKFM古楽の楽しみ」の公開録音さながらで、本当に楽しめた。また聴いてみたいです。



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岐阜県交響楽団第85回定期演奏会

今日は地元のアマオケ岐阜県交響楽団第85回定期演奏会を聴きに行きました。場所は、羽島市にある不二羽島文化センター・スカイホールです。曲目は次のとおりです。

ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
ムソルグスキーラヴェル編曲:組曲展覧会の絵

指揮:小田野宏之
ギター:荘村清志
管弦楽岐阜県交響楽団

昨年は聴いていなかったので、今回久々に行ってきた。やはり、岐阜響サウンドは健在だった。プロのオケと比較するのははばかられるが、オーソドックスなレパートリーを守りながら、それに止まらない、挑戦し続ける力強さを感じさせる。今回は、岐阜県出身の名ギタリストの荘村清志さんを迎えてのロドリーゴのアランフェスとあって、楽しみにしていた。

ウェーバーの「オベロン」は妖精界の王様のことで、一言であらすじをいえば、夏の夜の夢に匹敵するラブコメである。古典派からロマン派のひとつ手前の作曲家で、「魔弾の射手」と並んで有名な曲。歌劇のアリアのメロディーを引用するので、聴いたいて楽しい。

この演奏会で素晴らしかったのは、荘村清志さんがソリストのアランフェス協奏曲だろう。実はアランフェス協奏曲を聴くのは初めてで、あまり通して聴く機会がなかった。今回聴いてみて、これほど素晴らしい曲はないと思った。第1楽章は、スペインの陽光が降り注ぐような光景を思い浮かんできた。あまりにも有名な第2楽章のメランコリックなメロディーは、哀切漂うだけでない、陰りのなかの情熱を激しく演奏し、第3楽章の宮廷風の舞曲も軽やかで、スペインの風にふかれているかのよう。
荘村清志さんのギター演奏は、派手ではないが、しみじみと心地よい。心に響くような弦の音色にしびれた。幾度も演奏してきた曲だけに、決して気負うことなく、かといって得意気に演奏するようなところもない。自然体というかもしれないが、それも作られたものではない、長年の経験を積んできて得たものだろう。
アンコールに、タルレガの「アルハンブラの思い出」を演奏。これも古い時代のスペインに想いを馳せた曲。これも名演奏だったのに、終わりがけにフライングの拍手が。もう少しマナーを守って聴いて欲しいですね。

後半の「展覧会の絵」は、ラヴェル編曲だけあって、色彩豊かな音楽描写を期待していたが、聴いた感じは濃い水彩画といった趣だった。あまりにもベタベタだと食傷気味、薄すぎても味気ない。小田野さんはバランス感覚のある、誠実な指揮ぶりを伺えるが、それがオーソドックスで破綻のない演奏になるし、どこか物足りなく感じることもある。
でも、最後のキエフの大門は、これまでの積み重ねが花開いたかのようで、オケ全体が色とりどりの絵の具で描写する光景が目に浮かんだ。

次回はラフマニノフのピアノ協奏曲と、交響曲それぞれの第2番。今年2月に中部フィルでも聴いたのだが、胸いっぱいのお腹いっぱいだったので、どうしようか、考え中です。



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